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雲の峰掲載作品(2024年)

1月号(第391号)
当月抄

木枯を切り裂き国際線西へ
青葉集 「国際線」
狭庭への径を千両径と為す

時雨るるや竹に守らるる虚子の句碑

陵に人の営み落葉掃く

紅葉散る千本鳥居の石段に

木枯を切り裂き国際線西へ

冬田道郷に溶け込む古墳群

落葉焚く葛城山を煙らせて

​鋸の音響く勤労感謝の日

青葉若葉集(前月号より)

朽仏色なき風を身に纏ふ

課題俳句 「小春」佳作

小春日の御陵に鳥の戻りけり

誌上句会 2点句

​秋めくや地蔵の袈裟に般若経

かきもり句会 主宰選

​今咲きし山茶花風に攻めらるる

2月号(第392号)
青葉集 「鳰の声」
しはぶきて心の澱を吐き出せり
嘆きにも愁ひにも似て鳰の声
山茶花の蘂敷きつもる石畳
自転車の太き轍や冬田道
笹鳴や墳墓に風の二度三度
万両が将の御霊に傅きぬ
苔むせる無縁の塚に年惜しむ

課題俳句 「時雨」佳作

時雨るるや庭石は物言はざりき

誌上句会 1点句

​師の墓に広がる天の高きかな

かきもり句会 主宰選

​初鴉日の出の向きへ発ちにけり
 

3月号(第393号)
青葉集 「鴨泳ぐ」

山茶花のけふ開く者撓ふ者

七草粥先づちちははに供へけり

石仏の笑み絶やさざる寒の内

鴨泳ぐ時に流れに逆らひて

杭の如川に鷺立つ寒九かな

飾焚く煙の奥に古都の景

風止みて寒禽の皆黙すなり
青葉若葉抄(前月号より)

しはぶきて心の澱を吐き出せり

課題俳句 「時雨」佳作

初湯殿癖毛に蒸気満ち満ちて

かきもり句会 主宰選

惜別の嘆きに似たり鳰の声

4月号(第394号)
青葉集 「左右に望み」
梅ふふむ大和盆地を背景に

料峭の川面に映ゆるトラス橋

赤錆びしバックネットや春寒し

花薺沿ひに古城を目指しけり

なゐの神宿れる磐や春浅し

春寒し衣纏へる弁財天

城二つ左右に望み耕せり

課題俳句 「寒明」入選

寒明や土塁に埋まる石仏

かきもり句会 主宰選

​探梅や健康靴の履き具合

5月号(第395号)

当月抄

霾や石室の奥靄るほど
青葉集 「石室」

日光てふ椿日陰に咲きにけり

様々なお国言葉や梅探る

晶子歌碑椿を添へてゐたりけり

花ミモザ潜り往診医の来る

蒲公英や旧山門の荒るるまま

小綬鶏に誘はれ山の社まで

耕人の背に山よりの微風かな

霾や石室の奥靄るほど

課題俳句 「種物」入選

小さき手に溢るるほどの花の種

かきもり句会 主宰選

旧町の甍の列もかぎろひぬ​

6月号(第396号)
青葉集 「落花の行方」

学舎を去る子の列や竹の秋
蒲公英や慈しむ眼の露座仏
猫柳古都よりの風やはらかく
バスを待つ落花の行方追ひながら
頬白や我も一筆書き残す
もののふの眠る廓にひこばゆる
霾や墓標の朽ちしペット墓所

課題俳句 「陽炎」入選

陽炎の先へ駆け行く救急車
かきもり句会 主宰選

マゼラン忌霞に消ゆる貨物船

7月号(第397号)

当月抄
邪鬼踏みしまま夏に入る四天王
青葉集 「四天王」

ががんぼに落ち着かぬ夜来たりけり

邪鬼踏みしまま夏に入る四天王

島にゐて島で呼び合ふ四十雀

朝凪や貨物船の荷堆し

青嶺より見下ろす海の青きこと

いち早く絶景に着く道をしへ

木下闇此処に主の眠るらし

青葉集前々月号鑑賞

​霾や石室の奥靄るほど

課題俳句 「筍」佳作
筍生ゆ墳墓の御霊糧にして

誌上句会 9点句
みすゞ忌や路地にひと色すみれ草

かきもり句会 主宰選

​いつまでも売れぬ空家や姫女苑

8月号(第398号)
青葉集 「提灯花」

竹皮を脱ぎ切れぬまま天を指す
提灯花愛犬の墓照らすかに
老鶯や大和河内の間の山
蜘蛛の巣や主失ひて風のまま
花石榴中山道に風渡る
どこまでも澄める流れや濃あぢさゐ

独り言増ゆる夜なり牛蛙

課題俳句 「麦の秋」入選

麦秋や琵琶湖は常に我が右に
かきもり句会 主宰選

濃あぢさゐ我が晩年を華やかに

月号(第399号)

青葉集 「夏鶯」

共に生れ共に散らんと合歓の花

夏鶯源流に来て声落とす

玉虫発つ空に七色ちりばめて

初蝉や未だ独りの我が身にて

空蝉を洗ひ流せる今朝の雨

梅雨湿り大津絵の鬼微笑みて

波立ちて湖の沖より梅雨の雷

青葉若葉抄(前月号より)

独り言増ゆる夜なり牛蛙
課題俳句 「清水」佳作

磨崖仏清水に御身洗はれて

かきもり句会 主宰選

黒南風や地蔵の被る苔帽子

10月号(第400号)

青葉集 「機織」

機織や畑を隔てて陵二つ

草雲雀鳴く神鈴に応ふかに

ビル風に燭火の揺るる盂蘭盆会

あきつ飛ぶ枯山水の岩慕ひ

過去帳に帝の名ある残暑かな

秋暑し不動明王牙をむく

登高や澄まし顔なる丁石仏

課題俳句 「蓮の花」佳作

風吹かば海へ傾く蓮の花
誌上句会 2点句

​花石榴落日の色そのままに

かきもり句会 主宰選

​かの雲の裏は浄土か門火焚く

11月号(第401号)

青葉集 「風覗く」

登高やファインダーより風覗く

秋灯や文字の掠るる愛宕護符

拝殿に色なき風の通ひけり

葛咲くや川辺の砂は乾ききり

吽形の根元を染むる鶏頭花

鳶鳴くや稲田に影を落としつつ

水引や葛折なる登城道
青葉若葉抄(前月号より)

​草雲雀鳴く神鈴に応ふかに

課題俳句 「蜩」佳作

蜩や朝倉墓所は仄暗く
誌上句会 入選

​黒南風や十二神将湖睨む

かきもり句会 主宰特選

​ゑのこ草勝手気儘でありたしと

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